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巡る季節 vo.5 後編

巡る季節

巡る季節05後編エッセイアイキャッチ

新章
北風と太陽
*前ポストより続き。


なぜよく覚えているかと言うと
その後の行動性質に結構影響したな。
と思っているからである。

先生に疑われると言うことは
日頃の行動が悪いんだ。
「あいつは信用ならない人間だ」
皆 そう思っているかも知れない。

他の事も 等間隔に真っ直ぐ
完璧にこなさなけれなならない。
と 思うようになった。

別に聞かれてもいないのに
「私って善良な人間ですよ」
「きちんと完璧にこなしますよ」
と アピールするようになった。

でも そういうのはとても不自然で
上滑りしたり
軽んじられたり 疎まれたりする。

すると、更に
自分の価値に自信がなくなる。

次第に 表面的な社交は上手くなるが
相対する人に対して
自分といる事のメリットを考えたりしてしまう。

親しい間柄になった人が
離れてしまうのではないかと思い
どうでもいい嘘を吐いたりもした。

恋愛だけではないが、
立派なダメンズウォーカーが出来上がる
メカニズムもこれだ。

本来の自分が分からなくなり
たまに、ふと我に返り
嘘くさい自分が嫌になる。

歳を重ねるごとに
何かに傷つくたびに
一枚 鎧を増やす。

トラップ的な プライドや強がりが沢山でき
複雑ですんなり潜入できない迷路のように
心が 幾重にも閉ざされた
「要塞」と化してしまう。

そろそろ限界が来そうなのに
誰にも頼れない。
頼り方も分からない。

頑丈になっていっているのか
脆くなっているのか 分からない。

そういう人は案外多いのではないだろうか。

− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ソファでクッションに保たれながら
昔を思い出していたら
出かける時間が迫っていた。
今日は外食の予定だ。

簡単にメイクをする。

そう言えば
嫁いできたのが 大雪の年で
生活習慣の変化と寒さで
思うように身体が動かない時期があった。

出かける予定のある日でも
支度ができていない。

片目だけメイクを施した所に
帰ってきた夫に
「半分、可愛くしてくれたんだね」
と言われ
ちゃんと家事や支度ができていない言い訳を
あれこれしていたら

不思議そうな顔で
「君は完璧でないと怒られると思ってるんだね」

日々楽しく過ごしてくれればいいんだ。
と 微笑んでくれたのを鮮明に覚えている。

「要塞と化した心」
が ゆるゆると溶け出した。
「ただ 存在しているだけでいい」
と初めて思えた気がした。

ふとした一言の温かみ
その積み重ねは
鎧でさえ吹き飛ばす。

30年ぶりに洋裁をした。
ソファのクッションはお手製だ。

相変わらず
作ってみれば満更でもない出来だ。
と思う。

正直に言えば
端のどこかが少し攣れている。
でも
「まあ。いいや」

糸は再び 色とりどりに輝いた。
私はラッキーだ。
要塞からは解放された。

今日は夫の誕生日の食事だ。

ありがとう。
と思っている。

食べるもの は私が決めたけれども。

ありがとう。
と 思っている。

何もいらない と言うので 
私が欲しいものを買ったけれど。

いつも ありがとう。
と。
心から思っている。



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