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巡る季節 vo.2

巡る季節

巡る季節02エッセイアイキャッチ

代役

ロビーで待機している。
もう少し準備にかかるらしい。

暇つぶしにパラドックスについて考える。
「たまごが先か。ニワトリが先か」のあれだ。
検証不能な上、様々な種類があるので 結構面白い。

しかし 中に一つずっと納得がいかないのがあった。
「テセウスの船」というパラドックスだ。

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テセウスという名の船がある。
修理を重ね やがて 全てのパーツが
新しいものに置き換えられた時、
その船は「テセウスの船」だと言えるのか。

また、古いパーツを使って船を組み立てたとしたら
どちらが「テセウスの船」と言えるだろうか。

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「そんなの後者に決まってんじゃん」
と 思っていた。
が このパラドックスには続きがあった。

「これを人間に置き換えた時はどうなのか」

そうか。そうなると途端に ややこしくなる。

人は代謝を繰り返しながら生きている。
細胞の寿命は長く見積もって10年以下だから
やがて全てのパーツは入れ替わる。

全てのパーツが置き換えられたからといって
「私は私ではない」
とはならない。

船の性能や癖=その人が持つ人格や記憶。
船の部品=人間の細胞

要は 何をもって同一と見なすのか。
これはアイデンテティの問題なのだ。

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なるほど…。これもパラドックスだわ。
話がややこしくなってきたので
暇つぶしにはならないな。
一旦 考えるの止めよっと。

ま。今の所、
使い捨てられた細胞を再利用するとか無いしな。
別の私が出来るとか 心配せんでもええわぁ。
と 安心したところで 突如 思い出す。

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昨年、別々の頭部と胴体の接合手術に成功した
というニュースがあった。
倫理的な問題はさておき 論理的には
不老不死が可能になったのだ。

不能になった頭と身体を入れ替え続けたとしたら
それは一体誰だと言えるのか。

AIだってその一つだ。

すでに身体にチップを埋め込んでいる人も沢山いて
AIを利用しているのか、AIに利用されてるのか
分からない時代が来るだろう。
情報を書き換えられるかも知れない。

私が私である証明 は今後おそらく難しくなり、
私が私でなければ出来ない事も減っていくだろう。

「私から何が無くなった時、私は私で無くなるのか」

そして それはそんなに遠くの未来の話ではない。
かも知れない。

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「……。」
と 今度は勝手に しんみりした所で
「お待たせしました。雪音様」
名前を呼ばれ ハッとする。

今のところはの今日は。
質実ともに 私が私でなければならない
人生で数少ない一日だ。

能天気な私はしんみりした事などすぐに忘れ
どうぜ すげ替えるんなら
頭は 北川景子さんか石原さとみちゃん で
体は こじはるか深キョン がええなあ♡

とか考えながら
いそいそと呼ばれた部屋へ向かう。
お支度の時間だ。

「行ってきます」

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