新 series 巡る季節
旅の目的
接点は ほとんど無かったが
はっきりと名前まで覚えている同級生がいる。
ひとりは
音に色が見えるらしく 小学音楽の時間に
「翼をくださいって きいろい」
と騒ぎ 先生に怒られていた。
ひとりは
「フィボナッチ数列とひまわりの種の配列」
を中学夏休みの研究課題に提出し
「自分でやったものを出しなさい」
と怒られていた。
2人ともこう言っちゃなんだが
勉強も運動も 大体のものが最下位に近く
揶揄われても 怒られても ヘラヘラと
分かっているのかいないのか
コミュニケーションもスムーズには取れなかった。
しかし突然なのか 元々なのか
ある特定の分野では驚くべき能力を発揮していた。
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もしかしたらと 後に思う。
「サヴァン症候群や共感覚の持ち主」
だったのではないか。
その頃は今と違って理解が進んでいなかった。
せいぜい聞いた事あるのは
絶対音感ぐらいのものだろう。
私だって知らなかった。
「博学の白痴」と言われる彼らは
自閉症までではなくても
発達障害である事が多く、
成長の個人差として捉えられる年齢を超えると
異質な理解できない生徒 として 先生さえも
持て余すか、見放していたように思う。
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この旅の目的は
香りに音を聴くことができる調合師が創った
「オーケストラパルファム」
というフランスのオードパルファムを
見にいく事だ。
もしも。
「耳で香りを聴き、鼻で音を嗅ぐ事が出来たなら」
共感覚を持つ調香師が5つの香りを譜面にし
5人の音楽の巨匠が音で香りを解釈し演奏した。
香水と音楽がそれぞれセットになっている。
共感覚の世界の多合的な感覚 を味わうため
実際に手にしてみたくてしょうがなかった。
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ほとんど話した事がないのに
その同級生達を覚えているのは
その非凡さに羨ましさもあったのかも知れない。
器用貧乏で友人がいなかった私は
同じくひとりで教室にいるのに
楽しそうな彼らに憧れていた。
もちろん気軽にそんな事を言えない程
彼らを取り巻く環境は厳しい事もあっただろう。
実際に手に取ったパルファムは
ボトルから一つ一つ丁寧に手創りされていて
その香りに対する音楽も聴けるようになっていた。
その中の一つを選び持ち帰る事にした。
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ビルを出ると
まだ薄っすらと暑さの残る秋の気配がした。
風が秋の香りを運んでくる。
共感覚とまではいかなくても
私だって貴方だって
匂いで寒さを嗅いだり、感触で時の移ろいに触れる。
そう、今時期が一番それを感じる季節だ。
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…正直に白状すると。
これから旅の「いちばんの」目的を達成に行く。
美しき絶品料理を食べに行くのだ。
今日はこれから。
「色覚で味わいを見まくる」
まずは。お蕎麦から頂こう😋