新しい歩み
帰りの機内誌に
「初めての冒険」
というコラムが 掲載されていた。
そう言われると大抵は
幼少期を懐かしむ事になる。
私の場合「絶対帰らないぞ」
と 叱られて決めた8歳のプチ家出だった気がする。
しかし今「初めての冒険」で思い出すのは
一人暮らしを始めて かなり経ってからデビューした
「おひとり様での外食」だ。
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仕事の量が緩やかになって暫くし、
突如「行きつけのお店」というのが欲しくなった。
その時期 小さな孤独 を実感したせいかも知れない。
半年ほどリサーチする。
①ひとりで座っても迷惑でない事。
②お酒が飲めなくても大丈夫である事。
③構ってくれるが絡まれない事。
入ろうかと思っては行きつ戻りつ迷い 勇気を出す。
結果、私の行きつけは3店舗でき
想像以上に楽しい一時期を過ごす事ができた。
この「初めての冒険」は大成功だ。
その後 転勤が決まった時は
「そこを離れるのが嫌」というだけの理由で
半年程仕事をボイコットしてしまった。
長くなるので割愛するが
そこで出会った全ての人や 事柄は
私の人生の大切な一部として深く刻まれている。
そのうちの1店舗が閉店する。
惜しまれつつ閉店する。
百恵ちゃんや安室ちゃんスタイルの閉店だ。
第一報は突然で彼等らしいとも思ったが
スケジュールを調整し 飛んでいける猶予はあった。
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今、その帰りの機内だ。
心を抉られるような寂寥感が付き纏う。
また会える、いつでも会える というのは嘘だ。
離れた土地にいると家族ですら
後一生のうち何回会えるだろうと思う。
もう会えないかも知れないのだ。
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最終日まで ランチから夜更けまでお客様で一杯だ。
私だって楽しくて帰るのが嫌だった。
一人ひとりを主役にするのが上手かった彼らが
再び「初めての冒険」をしようと決意したのは
今度は自分の家族を主役にする為かも知れない。
スティーブ・ジョブズやジョージ・カーリンが
死ぬ前に後悔していたやつだ。
時間は有限。命そのもの。
時間割の変更だ。
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それはそうと。
もう会えない。
とは思いたくないので
「宝くじが当たったからのんびりしようと思って」
とか言ってくれないかな。
そしたら
「会いたいから家族で新潟来て♡」
って、遠慮なく言うんだけどなぁ。
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けんちゃん、のりちゃん ありがとう。
新しい歩みの幸多き事を祈ってます。